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金曜の終電車は・・・

金曜日、池袋の居酒屋で酒を飲んだ。
とってもいい気持ちになって、気が付いた時はかなりやばい時間。
あわてて電車に飛び乗るとギューギュー詰めで、終電車。
朝のラッシュのような混雑。

オレの目の前の若い女性が、そのギューギュー詰めの中なのに
携帯でメールを打っている。内容が読めてしまった。
それはこう入力されていた。

「金曜の終電車は、臭くて・暑くて・狭くて・最悪!!!」

おれは、思わず「同感!」と、言いたくなりその女性に握手したい
気持ちになる。その思いをぐっとこらえる。

池袋から30分ほど過ぎたあたりでようやく混雑も薄れ楽になる。
そして見えてくるのはおれと同様に酒を飲んで、グタグタになって
しまった人々。

かつらが思いっきり、づれている人がいた。
教えてあげたいが、本人はシルバーシートでおおきな「いびき」を
かいて爆睡している。

口から何か出している人を見た。何かと思って注意してみたら
それは入れ歯だった。
「おいおい!大切な入れ歯が落っこちて、行方不明になっちゃうよ」
と、教えてあげたいが、こちらは手すりにつかまり立ったまま眠って
いる。

みんな眠いのだ。みんな疲れきっているのだ。
そして、金曜日の終電車はいつも見ごたえがある。

そうかと思ったら、電車が駅についたとたん、血相を変えて
いきなり急いでホームに走り出した人がいた。
何事か?と思っておれは注目した。
その人は一瞬、空をながめたようなポーズに見えた。
口から思いっきり、吐瀉物が吹き出した。それは地上3メートル
まで吹き上がり、きれいな放物線を描いて、地面に到着した。

まるで何かの芸を見ているようで思わず拍手をしそうになった。
『ゲロの見事な噴水芸』そんなしょうもないタイトルが浮かんだりも
した。

おれは手すりにつかまって、「あと15分のしんぼうだな。」
と思い眠気と闘っていた。
おれの前で座っているサラリーマンの男の口がいきなりパカッと
開いた。
まるで陸に上がった魚のように、それは苦しげに見えた。
口からちょっと苦しげに息をしている。

口の中は真っ暗だ。
この男はみたところ普通の30代のサラリーマンだ。
口の中が暗黒すぎる。歯がないのだろうか?舌まで見えない。
じっと見ていると、その男の口の中を見ていることを忘れ、自分
自身の暗黒を見ているような気持ちにもなった。

一瞬、その口の中から誰かにのぞかれているような気がした。
口の中に小さな目の光を見た気がした。
口の中に動物がいる?
それとも小指より小さい小人が隠れている?

おれは気持ち悪さを感じたが、その30男の口の中から目を
離せない。
そのうちに、その真っ黒な口の中から暗黒のカーテンが上がるか
のように白い歯が見えてきた。「お、歯があったんだ。」
おれは、次は”舌”も見えるのかな?と、注目した。
それより、そのサラリーマンの男の前歯には何か文字が書かれ
ている。
よくよく目をこらして見ると、『見るな!』と、書かれていた。

おれは赤面する。
確かに、人を観察しすぎる悪い癖が自分にはある。
おれは、そのポッカリ開いたサラリーマンの口から目をそらす。

「あと5分で自分の駅に着く」
今度はひたすら駅に到着することに神経を集中した。

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コーヒーをのんだ

コーヒーが好きなおれはコーヒーを朝にのんだ。

腹の中に真っ黒なコーヒーが流れ込み、腹の中は夜になった。

腹の中は真っ暗闇。

コウモリの羽ばたきすらきこえてきそうだ。

朝なのに、「腹の中は夜」はさみしいから、蛍を100匹飲み込んだ。

蛍は腹の中に明かりをともしてくれるだろう。

       ***

でも蛍がふわふわ腹のなかをとびまわり、腹の中がかゆくなった。

姉が来て、「蛍を取ってあげるね」と言って

おれののどから手を入れて蛍を取ってくれようとする。

姉の手がのどちんこにつかえて、おれが苦しんでいると、

今度はガールフレンドが遊びにきた。

ガールフレンドは姉に対抗意識をもった。

ガールフレンドは姉とは違い、おれのへその穴から手をいれて、

腹の中の蛍を取ろうとする。さすがに、へその穴から手を

つっこまれたら、痛い。でも、どうやら胃に手が届いたようだ。

「いてててて・・・・」

おれのうめきと同時に

腹の中は驚いて、蛍がおれの胃の中から逃げた。

そして、コーヒーもびっくりして、口から噴水のように飛び出した。

      ***


噴出したコーヒーはどんどん空気を黒く染め上げていった。

光輝く朝が、曇り空となり、やがては夕立のような暗さになり

夜になってしまった。

夜がおれの口から流れ出たのだ。

せっかくいい天気になりそうな朝が、いつのまにかコーヒーの夜になってしまった。

でも胃の中から飛び出た蛍が、コーヒー空気の夜を舞って、とても綺麗だ。

おれは、その蛍に感激して、また入れたての熱いコーヒーを飲んだ。

その時、二人の声が響いた。「熱い!!!!」

姉の手と、ガールフレンドの手がおれの胃の中に、まだあるのを忘れていた。

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